胡麻でいきいき

2012-02-23更新
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[胡麻道]を極める

ゴマをほうろくで煎り、すり鉢で する。かつては、当たり前のように 見られた光景が、日本の台所から消 えて久しい。

これらはゴマを美味しく、しかも 消化吸収よく食べる知恵でもあった。 「アレルギーや花粉症の原因の多く は、食品にあります。現代病と称す る病気がの 増えているのは、抵抗力低下による。要するに、イ ンスタントや添加物が多い 今の食生活が悪いんだね。 ここらで、軌道修正をしな くちゃ。便利さや時間を短 縮することだけを追求して、 ゴマを煎るようなゆとりす ら、ないんだもの。昔の食 文化が持っていた豊かさを、 今一度見直したい。そのためにも、 ほうろくはシンボリックな存在。一 家にひとつ、と言いたいね」
食文化史を研究する永山久夫氏を 訪ねると、開口一番こう切り出した。
永山氏によると、現在は日本民族 全体に、コレステロールがたまって いる状態だという。
ということは、心と体のコレステ ロールを取る意味でも、ゴマの食べ 方について、改めて考えたい。

まず、ゴマの煎り+ほうろ くに、手のひらに軽くいっぱいのゴ マを入れる。耳を澄まして、ゴマの 音の変化を聞く。はじめは亜たかつ た音が、サラサラと暇い音に変わっ てくる。ときどき、香りも確かめる。

「あらゆる感覚をゴマに集中させ て」と、永山氏。なにせ〃胡麻道″ を極めるのだから油断大敵である。

1~2粒はねた瞬間に、火から下 ろせば、続いて3粒目がはねるとい う具合。ベスト・タイミングを逃し てはいけない。

ゴマをする・山淑のすりこぎ で、まず真上からつく。次に斜め。 この段階では、決してすろうとは思 わないこと。

粗ずりが終わりへいよ いよ本ずりに入る。すりこぎの頭を 持った手は固定し、下のほうの手を 動かす。八分ずりのあたりで砂糖を 加え、ぽた餅を作っても、美味しい。

すり鉢は、食卓にそのまま器とし て出せるようなものを選べば、一石 二鳥。洗い物も減るというわけだ。

ゴマを切る‐Iし木のまな板はキ ズがないと安定性が悪くなる。年季 の入ったまな板のほうがうまく行く。 包丁も鉄製の使い込んだものが理想 的。

ゴマを切りながら鉄分も併せて 補強しようという狙いである。

ところで、永山氏が利用するゴマ はほとんど黒ゴマ。その理由は平安 時代に書かれた医術百科司医心方』 によると、登場するゴマは 古代中国の司抱朴子』にも、仙薬と して黒ゴマをあげているからだ。

永山氏が掲げる〃胡麻道〃には、 脳や神経の働きを充実させたり、老 化を防ぎ、視力をよくするなどの効 能が見られるが、他にゴマの香りは 肺病に効くといわれている。

昔から、 ゴマを搾る油屋に結核はいないとい うし、天ぷら屋もまた、しかり。

今回、再現してもらった兵樋丸は 家康の考案。戦場では栄養が偏り不 衛生になりやすいため、家康は独自 の薬餌を持ち歩いた。黒ゴマや麦こ がしなどを調合した〃家康流兵級などを調合した〃家康流兵級 丸″がそれである。

かみ締めると唾 がわき出て、滋養豊かな味がした 手を抜かずに、ほうろくで煎って、 すり鉢ですっ 、たゴマは格別の風味 があった。

このゴマをふんだんに使 って作った和えものも、ふだん食べ ているものとは似て非なるもの。ゴ マの旨味と野菜の甘味が、口の中で 漣然一体と溶け合う。

野菜をおいしく〃ごまかす″ゴマ 和えには、日本の食文化が見事にあらわれている。

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